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最適化一口話

仕事として数理最適化を実践している立場から、その中身や可能性について概説しております。

最適化で何が実現できるのか(3)

判断材料を増やす

例えばスマートフォンを買うとして、契約プランの決定をする段になったとしましょう。 「利用量が 1G を超えないのならば基本料金お安め従量制のこのプランでしょうかね。 けど沢山使う方でしたらちょっと高いけど定額の契約もこんなにお得です。 ご家族と一緒に契約すると..」とかなんとか。滔々とおっしゃる窓口の方の前で相槌うちながらも内心すごく困っててプランの説明も細かいところはいつしか上の空。 なぜって「自分がどの程度利用しそうか」という最も重要な情報がないのだもの。 プランの説明はいいから「私ってその「沢山使う方」に見えますでしょうか」と聞きたいのが本音ではあります。

会社の業務としてこれと同様の判断を迫られる局面も多々あります。 例えば電力の購入先を変更する、アルバイトさんを新規採用する、大型のボイラーを購入する、 こういった投資を合理的に判断するときどうしても必要になるが得られないことが多いのは、 仮に投資が実行されたときにどういう使われ方をするのか、という情報ではないでしょうか。

実はこの「使われ方」を数理最適化の結果で埋める、という方法があります。 我々は例えば電力契約、プラントの機器、アルバイト人員などの場合を手掛けました。

  • 「需要予測を信じると電力プランを切り替えて、従量料金を払った方が得」
  • 「大きなボイラーを導入すれば、コジェネを有効に活用できメリットが出る」
  • 「ここにアルバイトの人が居てくれれば、社員が本来業務に集中できる」

いずれも業務に組み込んだとき、需要・既存の設備や人員と相互作用して結果が決まることなので、 数理最適化でも使わないとリアルな使われ方予測にならない。 大家さん蓄電池購入のケースはこのごく簡単な具体例になっています。一般に数理最適化は「最適に運用する・運用する」という強力な仮定があるので、 いわゆる「シミュレーション」と比べて外から与える情報が少なく済むのがメリットで、データ不足でも大丈夫。 ただ、あくまで「需要の予測」が正しく「最適に運用できた」という前提があることにはご注意ください。

コミュニケーションを促進する

実務の問題を解く数理最適化プログラムを作ろうとするならばその道のプロにまずは話を聞かせてほしい、とお願いするのが第一歩です。 「特に話すことはないよ」という前置きに続いて繰り出される情報はごく一部で数理最適化案件で言うと「仕様書」のレベルでしょうか。そこから実務家の意識下に埋まっている情報を掘り出す作業を開始するのですが、それには結果を出してダメ出しを受けるのが一番。その過程の中で「そういえば..」「言い忘れてたけど..」として溢れ出てくるこれらの情報は 実務家自身も驚くほど多いものです。 数理最適化の案件で我々が「チューニング」と呼んでいるプロセスはこのためにあります。

こうして実務家のノウハウをある程度(我々の経験値から言うと大体7,8割といったところです) 受け継いだ数理最適化プログラムができあがります。 これをエキスパート自身の居る部署での業務に使うのは普通として、 実は周辺の部署と方のコミュニケーションを促進するためにも使うことができます。 「いつでも聞いてください」と言ってくださる方でも忙しくてなかなか話を聞けなかったり、 あまりに簡単な質問をするのははばかられますが、プログラムならば大丈夫。 (その気になれば)中身だって見られる。 数理最適化プログラムは部署間のコミュニケーション解消の道具として活用するのもあるのです。

さてさて、数理最適化という道具が何ができるのかではなく、 今回あえて「その先」に話題を設定してみました。あくまでユーザーの方々側のお話しなので 我々は道具を提供したゆきがかり上近くに居ただけであくまで「観客」として見聞きしたことがほとんど。 例えば「公正さの追求」「コミュニケーション」といった側面は伺うまで意識したことはありませんでした。 このような事例を見聞きするのは私にとっての素直な喜びであり、 数理最適化の普及に向けての願いでもあります。